セメント混合によるクリンカ代替で炭素排出量を削減

親会社のCementos Argosが経営するコロンビアのArgos Rio Claroは、代替セメント系材料を混合することでポルトランドセメントのクリンカ代替率を高めたいと考えていました。この代替セメントは、2050年までにはコンクリートの炭素排出量ゼロを達成するという同社の持続可能性の推進に貢献しています。最終的にこのプロジェクトでは、1,500トン/日の生産能力を誇る、現在でも稼働している焼成粘土キルンとしては世界最大のキルンが建設されました。

この種の事業では通常、要求されるレベルの精度で材料を管理、測定、混合するために複雑なシステムが必要になりますが、Argos Rio Claroは精度や効率を犠牲にすることなく、工程手順を簡素化するコンパクトなシステムで工程の更新を管理できました。

焼成粘土がもたらす課題

同社は配合に天然のポゾラン成分である焼成粘土を選択し、最大45万トン/年の生産能力を持つ製造ラインを設置しました。

最終製品であるポゾランセメント(PPC)は環境に優しく、従来のセメント処理と比較してCO2排出量を38%削減、普通ポルトランドセメント(OPC)の製造と比較してエネルギー使用量を30%削減しました。

Argos Rio Claroで可燃性代替物担当ディレクターを務めるMauricio Giraldo氏の言葉を借りれば、セメント業界では市場参入する際に、概して「実績のある技術」を好むとのこと。ここまで大規模な焼成粘土キルンを建設するという今回の新プロジェクトには、いくつかの未知の要素があったようです。そこでArgosはQlarの専門知識と経験に期待し、移行に必要な設備について当社と提携して進めることになったのでした。

「世界的には、焼成粘土を扱っている企業がいくつかある」と語るのは前述のGiraldo氏。しかし、焼成粘土固有の課題があり、特に材料の反応を100%の精度で予測することは不可能と言われています。

ポゾランセメントとは?

ポゾランという言葉は、ベスビオ火山の近くで発見された火山粉を意味するイタリア語「Pozzolana」に由来します。天然のポゾランとは火山由来の原料や堆積粘土のことで、ローマ帝国時代から結合材として使用されてきました。最近になって、水酸化カルシウムと反応する他の材料が次々と発見されたため、補助セメント系材料(SCM)という言葉が使われるようになっています。SCMは、人工ポゾランや高炉スラグ、フライアッシュ、もみ殻灰などの産業廃棄物や加工材料に由来します。またSCMを使用したセメントは、ASTM国際規格によって管理されています。

ポゾラナポルトランドセメント(PPC)は、OPCに20~30%のポゾランまたはSCMを混合して作られます。水や石灰と混合すると、ポゾラン材料は水酸化カルシウムと反応を起こし、セメントのような性質を持つ化合物を形成します。

普通ポルトランドセメントは石灰石、石膏、石灰物質の混合物で、業界で最も一般的に使用されています。OPCは混合時の初期強度が大きく、PPCよりも硬化時間が少なくて済みます。

しかし、耐用期間中はPPCの方が耐久性や加工性に優れており、硬化するにつれて強度も増します。さらに、PPCは環境に優しいうえ、エネルギー消費が少なく、OPCよりも製造費が低くなるためセメント業界には好都合です。

ポゾランに含まれる材料は多岐にわたるため、目的とする特性や作用を持つ最終製品を得るためには、計量と混合を慎重に行う必要があります。また、ポゾラン材料の反応性は、個々の粒子径や材料組成、温度など、様々な要因に左右されます。その他にも、母材の配合や構成材料、硬化時間・硬化手順も、目的の結果を得るために考慮に入れなければなりません。

ポゾランの反応時間は、温度上昇に比例して速くなったり、高アルカリポルトランドセメントと併用された場合に速くなったりします。Argosの工場が使おうとしている焼成粘土は、加工性を高めます。反応時間に関係するその他の要因としては、水の要件や化学添加剤の再調整などがあります。

持続可能なビジネス慣行への投資

この製造ラインをグリーンセメントの製造と販売に転換するため、Cementos Argosは7,800万米ドルを投資しました。一つには、焼成粘土を組み込むことでクリンカの使用量を削減できるという理由で、ポゾランセメントの製造は環境に優しいと言えます。ポゾランとクリンカの比率はセメントの機能性にとって極めて重要。これがCO2排出量の削減とエネルギー消費の低減につながるのです。

雑誌Materialsの「セメント産業における炭素排出量削減のための代替クリンカ技術」と題された評論によると、「(セメント)製造における2つの主なCO2排出要因は、ロータリーキルンを加熱するための化石燃料の燃焼と、OPCの主成分であるクリンカの製造における焼成工程に関連する化学反応である」と解説されています。

さらに、「クリンカ1トンの製造で約0.83トンのCO2が排出され、OPC1トンの製造で約0.54トンのCO2が排出される。セメントキルンを加熱するための化石燃料の燃焼が、 排出量の35%から40%を占めている」とも解説されています。

ポゾラン系材料は一般に、次のようなものの製造に役立ちます。

  • 気孔率が低く、ブレーン値の大きい微細粒子のセメント
  • この低い気孔率が骨材と補強材の間の隙間を埋め、収縮やハニカム形成を減らし、最終製品の耐久性と強度を高める
  • 通常であれば廃棄される工業副産物をセメント混合物の成分として使用できる、環境に優しい製造工程
  • 硫酸塩劣化に耐性のある材料で、水力施設や海洋構造物、ダム建設などに最適
  • OPCと比較して二酸化炭素排出量が少ない
Installation of blending system at Argos Rio Claro

Qlarが世界最大の焼成粘土キルンで正確な計量と混合を支える

Qlarが課題の答えを見つける

様々な補助材料の粉砕に応じて代替率は異なるため、クリンカの代替では非常に正確な測定が求められます。また、これらの原料の混合物を完全に混合して均質にする必要もあります。つまり、投入量が正しくなければなりません。Giraldo氏は、「何かを建設しようとしているお客様に実用的な製品を提供するためには、セメントの袋の中の材料が隅々まで同じで、よく混合されていなければなりません」と語ります。

Giraldo氏によると、これには通常、複雑な設備システムが必要とのこと。しかし、Qlarの担当者は、2台のMULTICOR®計量システムをベースにした、コンパクトでシンプルなシステムを提案しました。これによりCementos Argosは、目的としていた処理に最も費用対効果が高く、正確で効率的なソリューションを導入できたのです。

MULTICOR® Coriolis flow meter

Qlarが導き出した完全なソリューションの仕様

Cementos Argosは2019年に、「Cemento Verde」という名の新しいタイプのポゾランセメントを発売しました。

Qlarが設計したシステムは、設置が簡単で、最小限の設置面積や高精度、供給の信頼性、耐久性を実現し、保守をほとんど必要としないといった、お客様が指定する仕様を満たすものでした。

特に、Qlarがコロンビアで用意した現地サービス技術者や、当社は設計やエンジニアリングから試運転に至るまで完全なソリューションを提供しているという事実を考慮すると、この事業の成功にはQlarの技術的知識が不可欠だったことが証明されました。

Qlarは次のようなシステム部品を提供しました。

  • MULTICOR®コリオリ流量計
  • 監視制御装置(DISOCONT® TERSUS)
  • スライドバルブ
  • 制御バルブ
  • エアスライド
  • 集塵装置
  • 送風装置
  • 機械製図/設計図

Argosにとって特に価値があったのは、質量流量供給・投入計量装置のMULTICOR®に採用されていた、流量測定・混合に関わるQlarの技術でした。この装置はコリオリの原理で正確に流量を計測します。これはバルク固体に特有の測定原理で、他の測定手段で誤差を生じさせる材料特性の変化とは無関係です。

MULTICOR®は材料の流れを±0.5%の精度で測定します。質量流量は正確に測定され、調整可能な前処理供給機と連動して供給されます。この精度により、工場では 1)正確な処理量を供給することで費用を削減できる、2)高価値の最終製品を製造できるという利点が生まれます。

このプロジェクトは設計から設置まで、全体で6ヶ月を要しました。設置されたシステムは2020年の初めから稼働しています。

Argosの取り組みの今後の展開

Giraldo氏は「これに続くような画期的なシステムの登場を楽しみにしています。きっと業界のゲームチェンジャーになるはずです」と語ります。

そして次のように付け加えます。「図面から現場施工へと進み、計画されていたことが機能する様子を実際目の当たりにすると、本当に圧巻です。自分がそのチームに関われたことをとても誇りに思います」

このキルンを2020年に設置して以来、Qlarは北米でさらに3つのセメント計量・混合ラインを提供しており、他に設計段階のラインも複数あります。

Cementos Argos, S.A.でプロジェクトディレクターを務めるMiguel R. Suarez氏からは、「(Qlarの)混合システムでは混合物の均質性が確保されるので、品質面での貢献度は絶大です」との評価をいただいています。

Suarez氏は、Qlarとの協働がもたらした利点をいくつか挙げています。

  1. セメントミル製造を最適化することで、費用を削減できた
  2. セメントの二酸化炭素排出量を最大38%削減することで、持続可能性の取り組みを促進できた
  3. 以前の方法に比べて精度と標準偏差が向上する混合工程になり、セメントの品質が向上した
  4. 製造の柔軟性が向上したライン内混合により、オペレーターは市場の需要に合わせて比率や添加剤をすぐに変更できるようになった
  5. 製造の改善によって施設の生産能力計画が合理化され、完成品の発送スピードと貯蔵サイロの有効活用によって貯蔵施設も最適化された

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