Alstomが達成した最先端の移設
列車のボギー台車検査において、精度と効率は最優先事項です。スマートで持続可能なモビリティの世界的リーダーであるAlstomは、長年にわたりQlarのMULTIRAIL® BogieLoadシステムに信頼を寄せてきました。同社は最近、英国のクルーにある試験場での作業量の増加に対応するため、マンチェスターの車両基地からチェシャー州のこの施設にシステムを移設しました。その距離、44.8km（27マイル）。そしてその過程で、システム自体を大幅に最新化しました。
Alstomは、英国とアイルランドの新型車両・列車サービスの大手サプライヤーであり、信号や鉄道インフラの大手プロバイダーでもあります。Alstomは、英国の幹線鉄道車両の実に40%弱、ロンドン地下鉄とダブリンのLuasに至っては運行している全車両をこれまでに製造、または現在製造中です。
マンチェスターにあるAlstomのロングサイト車両基地は、産業革命最盛期の1842年に初めて開設されました。現在では、56編成のクラス390車体傾斜式車両ペンドリーノを含む約50もの車両が毎日ここで点検・整備されています。これらの車両はAlstomが製造したもので、現在は運行会社のAvanti West Coastが、貨物・旅客輸送経路としては欧州で特に混雑する鉄道路線の一つであるウエストコースト本線沿線で使用しています。
マンチェスターのハイテク試験
Alstomは2008年以来、QlarのMULTIRAIL® BogieLoadシステムを使用して、車両基地でオーバーホールされている様々なタイプの列車を試験してきました。このハイテク装置を使えば、様々なタイプやサイズのボギー台車を正確、迅速、柔軟に試験できます。スピンドル技術を採用した完全な電気機械式設計と、テストスタンド中央のトロリーの完全自動位置決めの組み合わせにより、安全で摩耗や損傷が極めて少なく、保守費用も低いという最高の条件を実現しています。また、最高の精度を確保するため、Qlarのエンジニアが試運転以来、継続的に装置を点検し、必要に応じて機械的な修理やソフトウェアのアップグレードを行ってきました。
Alstomは英国とアイルランドで事業所を37箇所運営していますが、クルー事業所での作業量が増加したため、QlarのMULTIRAIL® BogieLoadシステムを移設し、同事業所の業務を支援することを2022年に決定。クルー事業所は、ボギー台車とトラクションモーターのオーバーホールを行う英国の中核的研究拠点であり、英国鉄道市場向けに過去10年間で20,000台以上のボギー台車をオーバーホールしてきました。「クラス390ペンドリーノのために、週22台のボギー台車をオーバーホールする新しい製造ラインを作りました」と説明するのは、Alstomでプロセス改善エンジニアを務めるBharat Gopal氏。「その工程には、ボルスターのオーバーホールから、ローテーターを使用したフレームのオーバーホール、すべてのボギー台車を試験するためのQlarのプレスが含まれていました」と続けます。さらにAlstomは、既存のMULTIRAIL® BogieLoadシステムの移設に加え、工場のコンピューターとPLCシステムのアップグレード、計量システムの最新化、プレスフレームの530mm引き上げもQlarに依頼しました。
クルー事業所での再試運転に成功
通常、大規模な設備の移転と最新化を行う場合、様々な対策を数多く実施する必要があるため、関係者全員がとてつもなく大きな挑戦に取り組むことになります。その第一歩として、QlarはMULTIRAIL® BogieLoadシステムの電子機器のためにインフラを改良しました。この間、PROXiQリモートアクセスシステムも設置。これにより、Qlarのサービス技術者は24時間365日、どこからでもこの機械の制御装置にアクセスできるようになりました。また、起こり得る不具合を早期に発見し、簡単に修正できるようになりました。
これに加えて、トロリーに作用する垂直力を測定するための新しい測定区画が2つ、530 mmまで高くなった新しいレールに設置されました。大規模な最新化作業が行われたシステムは、マンチェスターで解体され、慎重に梱包されたうえで、クルーにある新拠点に搬送。その後設置され、高精度のキャリブレーションで再試運転に向けた準備が整えられました。最終検収後には、Alstomの従業員が新しいテストスタンドの操作と取り扱いについて現場で説明を受けました。
AlstomはQlarとの協働をとても前向きに評価しています。「プレスの移設からアップグレード、試運転に至るまで、プロジェクト全体がタイトな納期に従って進められました」と語るのは前述のBharat Gopal氏。「マンチェスターでもクルーでも、全工程にわたってボギー台車の混乱は一切なく、試験も順調に行えました」
