欧州連合(EU)では今後、プラスチックのリサイクル量が激増する見込みです。これは、欧州委員会が循環型経済に向けた第2次アクションプランで定めた目標です。現在、EUでリサイクルされているプラスチック廃棄物は全体の約3分の1。世界に目をやると、リサイクル率は10%にも届きません。将来、この状況を変えるためには、廃棄物の投入、搬送、処理を最適化する技術が必要です。これまで以上の速さ、正確さ、費用対効果の良さが求められます。特にケミカルリサイクルには可能性があります

循環型経済においてプラスチックリサイクルが果たす役割

プラスチックは軽くて丈夫です。それにもかかわらず、近年は不評を買っています。ビニール袋やペットボトルなど、世界中で見つかる海洋プラスチックごみの写真が、プラスチックに対するマイナスイメージを植え付けているのでしょう。世界のプラスチック廃棄物の20%以上が、いまだに適切に処理されず廃棄されています。しかしこの廃棄物は、資源を節約するリサイクルには理想的です。最新の技術のおかげで、プラスチック原料は何度もリサイクルできるようになり、循環型経済の中で長期間維持されるようになりました。環境に有害な埋め立てはもはや必要ありません。そうした廃棄方法の禁止は、以前からEUの諸機関でも議論されています。

欧州連合は「欧州グリーンディール」の中で、2050年までに循環型経済を達成するという目標を掲げています。プラスチック包装のリサイクル率の向上はこれに貢献するでしょう。EU加盟国のプラスチック包装のリサイクル率は、2030年までに60%まで上昇する見込みです。そして、この数字を達成するためには、産業界もいくつか調整を行わなければなりません。

プラスチック廃棄物のリサイクルにおける選択肢

プラスチック廃棄物は新しいプラスチック製品に変えることができます。そうすることでCO2排出量が削減され、持続可能な循環型経済が促進されます。リサイクル方法に関して言えば、メカニカルリサイクルとケミカルリサイクルで方法が異なります。そして第3の選択肢は、代替燃料として焼却することです。

メカニカルリサイクル

メカニカルリサイクルでは、まずプラスチック廃棄物を徹底的に分別、洗浄してから破砕します。次に、調整済みのフレークを溶融、濾過し、添加剤と必要に応じて充填剤を加えた後に造粒します。こうしてできたプラスチックの粒状物は、再生品として新しい製品に加工できます。プラスチックのメカニカルリサイクルは政治的にも法律的にも推奨されているリサイクル方法です。ケミカルリサイクルに比べると、メカニカルリサイクルに必要なエネルギーは大幅に少なく済みます。しかし、メカニカルリサイクルに適しているのは、工業包装やペットボトルなどの混合されていないプラスチック廃棄物だけです。こうした製品は世界のプラスチック廃棄物の大部分を占めています。しかし、加工されたプラスチックが混入していることで、リサイクルがいっそう困難な物は他にもたくさんあります。

ケミカルリサイクル

十分に分別、洗浄できないプラスチック廃棄物は、原料としてリサイクルできます。ケミカルリサイクルでは熱エネルギーを使って高分子化合物を分解します。熱分解やガス化が一般的な処理方法です。これによって生成される合成油や合成ガスは、化石原料の代わりにバージンプラスチックの製造に使用できます。バージンプラスチックは、食品包装や医療用途など、衛生上の要求が高い製品の製造に適しています。メカニカルリサイクルに比べて多くのエネルギーを必要とすることから、ケミカルリサイクルは長い間、商業利用には不向きとされてきました。しかし最近になって進歩が見られ、原料リサイクルは焼却に代わる方法として考えられるようになってきました。処理効率が向上していることや、処理の中で再生可能エネルギーの利用が増加していること、リサイクル製品に対する全体的な需要が高まっていることから、ケミカルリサイクルを取り囲む状況は改善されています。また、CO2価格の上昇も焼却にかかる費用の高騰につながるため、リサイクルの財政的魅力を高める結果となっています。

燃料としての利用

プラスチックが有機廃棄物と混在しているなど、廃棄物を十分に分別できない場合、残された最後の選択肢は焼却です。持続可能な循環型経済の観点からすると、これは可能な限り避けなければなりません。例えば、セメント産業では焼却が行われています。その過程で廃棄物が代替燃料として利用され、化石燃料の使用削減に役立っています。

廃棄物を投入する際の課題

リサイクルの過程では、特性が大きく変動するバルク材を一貫して投入することが課題となります。正確で連続的な供給と信頼性の高い動作は、効率的な処理を保証するためにとても重要です。破砕されたプラスチックや混合廃棄物を扱う場合、多くの特徴を考慮に入れる必要があります。

組成と品質が一定でない

プラスチックのリサイクルというと、多くの人はまずペットボトルや買い物袋を思い浮かべるでしょう。しかし、高分子化合物には他にも多くの用途があり、建築材料や自動車製造、家電製品などにも使用されています。このような場合、プラスチックは製造時点ですでに他の原材料と混合されています。そうした材料は、後で簡単には分別できなくなります。リサイクルにおいて特に問題となるのは、機械に損傷を与える異物(石など)や、循環型経済に入ってはならない有害物質です。このため、分別が不十分な廃棄物や病院から出る廃棄物などは、メカニカルリサイクルには適していません。

流動性が悪い

プラスチック廃棄物はかさ密度が低いため、投入と搬送が容易ではありません。例えば、機械(化学反応装置や押出機、炉)への供給時に滞留や閉塞が発生することがあります。製品内にブリッジが形成され、自由な排出が妨げられることも。他のバルク材に比べて、軽くて流動性の悪い材料は取り扱いが難しくなります。特に混合プラスチック廃棄物の流動性は大きく変化する可能性があります。連続工程には信頼性の高い正確な投入が不可欠です。

体積が大きく低密度

プラスチックが軽量であることは、リサイクルに関しては不利に働きます。体積が大きく密度が低いプラスチック廃棄物の特徴が、搬送と処理を難しくしています。

課題を克服する方法

ほとんどの国でケミカルリサイクルはまだ発展段階にあります。しかし他の産業では、分別の不十分な廃棄物やほとんど分別されていない廃棄物の投入がすでに試されています。セメント産業が良い例で、代替燃料を使ってクリンカキルンを焚く工場が増えています。この目的に使われているのは、様々な起源を持つ廃棄物や、混合比の異なる廃棄物です。Qlarのようなメーカーは、適切な機械部品を選択するために、そうした代替燃料の流動性を調べる試験センターを設けています。こうしてセメント業界が培ってきた知識は、ケミカルリサイクルの工程を最適化するための知識として応用できます。同社はまた、メカニカルリサイクルにおいても長年の経験があり、その専門知識を有益な形で応用できます。「欧州グリーンディール」を進める中で、このようなネットワーク化された知識の重要性は一段と高まっています。

Qlarのリサイクル試験能力について詳しく見る

結論:プラスチックリサイクルは将来の必須事項

プラスチックリサイクルの環境保護対策としての重要性は高まる一方です。循環型経済を実現するためには、今以上に廃棄物をリサイクルしなければなりません。製造工程は精度を犠牲にすることなく、さらに高速にする必要があります。

機械工学では、要求の高まりに対するソリューションが必要です。ここでもソフトウェアが重要な役割を果たします。最新の投入ソリューションにはすでに、多数の工程パラメーターを記録する複雑な制御システムがあり、デジタルでインテリジェントなソリューションに大きな可能性を与えています。スマートマシンが流動性の変化に自動で反応し、収集されたデータに基づいて人工知能(AI)を使って設定を調整できるようになれば理想的です。セメント製造など他の産業では、問題のある廃棄物の処理も導入されています。関連する経験を持つメーカーであれば、こうした知識をプラスチックリサイクルに応用できます。

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